まなざしかいご

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    詩人・藤川幸之助さんの「まなざしかいご」を読みました。

    薄水色の表紙に、白抜きで「まなざしかいご」と平仮名で書いてあります。

     

        

                                中央法規 出版

    見落としそうな小さな文字で

     認知症の母と言葉をこえて向かいあうとき  という副題があります。

     

    この本は、放送大学の「認知症と生きる  」という講座を視聴していた時、

    講師の井出 訓先生が紹介された何冊かの本のうちの1冊です。

     

    どうして詩人が介護本の本を?とお思いでしょうね。

    初め私も理解できなかったのですが、少し説明をしましょう。

     

    最初、「認知症の母」を看ておられたのは、心臓病を患っていた幸之助さんの父上でした。

    その父上が亡くなられる際、幸之助さんに伝えられた言葉が、

    「何かを抱えながら必死に生きる母の姿を、おまえが見ておけ」だったそうです。

     

    小学校教師であった幸之助さんは介護の経験は全くなく、同じ話を繰り返す母親に、

    「うるさい」「黙れ」「しゃべるな」とイライラがずっと続いたそうですが、

    いつも手を握っていた父上の介護を思い浮かべ、心が変わっていかれたそうです。

    長い介護の中から生まれたのがこの本です。

    30数編の詩と解説、それに沢山の写真で構成されています。

     

    その中から、2編の詩をご紹介したいと思います。

       

     静かな長い夜

     

        母に優しい言葉をかけても

        ありがとうとも言わない。

        ましてやいい息子だと

        誰かに自慢するわけでもなく

        ただにこりともしないで私を見つめる。

     

        二時間もかかる母の食事に

        苛立つ私を尻目に 

        母は静かに宙をみつめ 

        ゆっくりと食事をする。

        「本当はこんなことをしてる間に

        仕事がしたいんだよ」

        母のウンコの臭いに 

        うんざりしている私の顔を 

        母は静かに見つめている。

        「こんな臭いをなんで

        おれがかがなくちゃいけないんだ」

     

        「お母さんはよく分かっているんだよ」

        と他人は言ってくれるけれど 

        何にも分かっちゃいないと思う。

     

        夜、母から離れて独りぼっちになる。

        私は母という凪いだ海に映る自分の姿を 

        じっと見つめる。

        人の目がなかったら 

        私はこんなに親身になって 

        母の世話をするのだろうか?

        せめて私が母の側にいることを 

        母に分かっていてもらいたいと

        ひたすら願う静かな長い夜が私にはある。

          

     

    母親に遺漏をつけるところや、おむつを着用させる描写など重いテーマですから、

    読んでいてしんどくなる箇所もあります。

    でもあることを契機に「母との関係性の中で私は生き、私は生かされている」と言う境地

    へと変わったとありました。

     

       まなざし

     

        ただの視線ではない

        まなざしには

        その視線をおくる者の

        心がうつしだされている

        まなざし

        向ける者と向けられる者

        向けられる者と向ける者

        母と子のように

        微笑みでありたい

        空と海のように

        澄んでいたい

        まなざし

        言葉をこえて

        意味をこえて

        見つめることで

        静かに愛しあいたい

        まなざし

        人の体さえもこえて

     

    認知症 今一番問われているテーマですね。

    でもこの本(詩集)を読んで、少し私の気持ちが軽くなりました。

    何度も繰り返し読みたくなる本に久しぶりにであったように思います。

    介護なさっている方にも、そうでない方にもご紹介したいと思いました。

     

                                  

                                                 咲きはじめたクリスマスローズ ’17年  春 

     

     この詩を掲載させていただくにあたって、藤川幸之助さんから

     特別にご許可をいただきました。

     そして藤川幸之助さんのホームページのアドレスも教えて戴きましたので

     是非 ご覧ください。

        http://www.k-fujikawa.net/

     

     


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    profilephoto ■ニックネーム 遊山 ■住んでるところ 大阪府   60歳まで福祉畑で仕事していました。 70歳を過ぎた現在は、夫と100歳になる実父との超高齢世帯です。 京都に近い北摂の山間部で生活しています。恵まれた環境ですが少し不便です。 旅行が好きでスケッチ旅行に何度か海外へ行きましたが、介護が始まってからは、もっぱら京都や奈良の美術館巡りです。 ブログでは裏山に自生する植物や野鳥、昆虫などの紹介をしたいと考えています。 写真は素人ですが、さりとて上手な絵が描けるわけでもありません. 時々「へたな横好き」のスケッチをupしたいと思います。

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